「杉山世子の海外珈琲紀行」はじまりました。
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懐かしい熱気に包まれた。乗り換えのために訪れたバンコクは32度。着込んでいたヒートテックは飛行機の中で脱いでいた。度の合わないメガネからコンタクトに変えた途端に視界が開けた。様々な人種で混み合う国際空港内から、タクシーで北バスターミナルへ向かう。果たしてタクシーでどの程度の場所なのか実は見当もついていない。
幸いなことに、気の良さそうなドライバーが、ほとんど理解できない英語混じりのタイ語で気持ちよく北バスターミナルへと連れて行ってくれた。40分くらいハイウェイを走っただろうか。メキシコと違って、どこに連れて行かれるのだろう、という不安感が驚くほど少ないのは、同じアジアの人間だからなのか、それとも、微笑みの国というコピーが産む安心感なのか。
幸いなことに、気の良さそうなドライバーが、ほとんど理解できない英語混じりのタイ語で気持ちよく北バスターミナルへと連れて行ってくれた。40分くらいハイウェイを走っただろうか。メキシコと違って、どこに連れて行かれるのだろう、という不安感が驚くほど少ないのは、同じアジアの人間だからなのか、それとも、微笑みの国というコピーが産む安心感なのか。
北バスターミナルに着き、ラオスのパクセーまでのチケットを取るために、売り場を目指した。ここも大きなバスターミナルだと聞いていたので、もっと迷うかと思ったが、「建物の中に入って21,22のカウンターだよ」と言われた通りに進むと、あっさりとそれは見つかった。
でも旅は平穏であることを忌み嫌うものだ。私が乗りたかった1日1本しかないパクセー行きは、すでに満席。
なんかそんな予感はしていたのだよ。
だって順調すぎるもの…
とはいえ、カウンター越しで、私はショックを隠しきれずにいると、男性のスタッフは淀みのない英語でウボン行きを勧めてくれた。
「ウボン?あ、それは確か国境の街だよね?ウボンからパクセー行きの国際バスがあるってこと?」
そうだ、と言う。
というわけで、私は20:30発ウボン行きを慌ててブッキング。これで安心というわけでは全然ないけれど、チケットを手にすると、急に空腹感をおぼえ、食堂を目指した。
タイ語でしか表記のないメニューの看板をまるで無視し、ガパオとビーフン入りのスープを指差しオーダー。辛さにひーひー言いながら、すっかり上機嫌な私は、やっぱりどこかのネジが外れているのかもしれない。
満腹感の中、食後のスムージーを飲んでいると、店内に軽快なタイ語の歌がチャラリと流れる。すると店の中にいた老若男女が、のそのそと立ち上がった。前髪をとがらせた若い男の子が、スマホをいじりながらも、立ち上がる様子を見たら、つられて私も立ち上がっていた。時計が18:00ちょうどを指している。
一連の儀式にしれっと参加してみると、なんとなくタイのことが少しわかったような気がした。きっとバンコクとも、相性が良いはずだ。
さて、無事にパクセーにたどり着くだろうか。と言いながら、それほど不安感がないのは、この生暖かい風のおかげだと思う。