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まだゆめのつづきから1年  起業後13年

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まだゆめのつづきから1年  起業後13年
わたしはときどき、致命傷になりかねないほどやらかす。
大きな声では言えないが、半ば確信的にやらかす。
 
立ちはだかる課題を前に、目を瞑らずとも、見えるか、見えないかくらいの「薄目」にして、自分にとって都合が悪いことを遠ざけるようとするクセがある。
 
Story of mamenokiシリーズで、「起業後8年」が非公開になっているのは、まさに、そのわたしが招いたピンチについてだった。
(いつか再び公開することがあるかもしれませんが、今はまだ時期尚早のような気がしています。)
 
当時、自社単独輸入もままならなかったころ、
「とにかく自社輸入の実績を作りなさい。」
と、ある会社の社長が、セスマッチコーヒーの購入資金を立て替えてくださったのだ。
そしてその社長と約束した「2年で売り切る」という約束を、こちらに都合よく解釈した結果、倉庫に大量の在庫が残ったまま、2年を経過してしまったこと。
 
「あれから2年が経つけど、大丈夫?
今ある在庫はあと2ヶ月以内に引き取るように。」
 
と、2年経過しているにもかかわらず、さらに2ヶ月も猶予をいただけること自体、甘えすぎているのだが、結局、2ヶ月ではどうにもならず、追加で、購入計画を出すことで、お許しを頂き、そのあと、1年くらいかけてその豆を販売するという出来事があった。
今振り返ってみても、自分の未熟さと責任感のなさを痛いほど感じる。自覚がまるで足りなかった…。
 
当時の当社の状況としては、同時期に、はじめての銀行借入を実行しマヤビニックを6.9トン購入したのだ。「1年の短期返済」という条件に追われ、マヤビニックの販売に注力するあまり、立て替えていただいているセスマッチのプロモーションをおざなりにしてしまった結果、大量の在庫を抱えることになってしまったのだった。
 
セスマッチに対しても、同様に申し訳ないことをしたと思っている。
 
セスマッチのコーヒーは、世界一美しいと言われる幻の鳥、ケツァルの生息する、エル・トゥリウンフォ国立公園の周辺で栽培されており、環境保護の観点でも強いメッセージ性があるため、アメリカのロースターさんがこぞって訪れるエリアでもある。
何より、コーヒーの品質をはかるカッピングスコアは、マヤビニックを凌ぐ実力のあるコーヒーなのだ。
それにも関わらず、私はマヤビニックの販売に躍起になり、セスマッチの素晴らしさを伝えきれずにいた。
 
 
彼らとの出会いは、2010年。
まだ、わたしが大学生で、大学の研究室主宰で行っていた「メキシコ国チアパス州先住⺠関連3団体に対するコーヒーの加⼯・焙煎およびコーヒーショップの開店・経営に関する技術協⼒事業」にまで遡る。
3団体からそれぞれの代表者が日本にやってきて、九州で研修をおこなった。その際に参加していたひとりが、今もなお、セスマッチのコーヒー部門の責任者、Sixtoさんだ。
 
スペイン語しか話せないSixtoさんと、スペイン語のまったく話せなかったわたしは、日本研修の際に、ほとんど言葉を交わすことはなかったが、メモを熱心にとる彼の姿に、真摯さやひたむきさを感じることができた。
 
 
彼らとは、忘れられないエピソードがある。
 
年間15コンテナ(約280トン)以上を購入するアメリカのバイヤーの産地訪問をアテンドした翌日に、まだ1コンテナも購入していない私に、時間を割き、2日間かけてじっくりと産地を見せてくれたこと。
「私には、まだ買う力がない」
と言うと、
「Seikoが日本で私たちのコーヒーを少しでも広めようとしてくれる気持ちが嬉しいから、気にしないで」
と言ってくれていたSixtoさん。
 
未だ、マヤビニックの影に隠れ(隠して)、その魅力を十分に伝えきれていないことに、わたしが気づくのは、いつもピンチが訪れてから。
 
 
冒頭に戻ろう。
 
 
わたしはときどき、致命傷になりかねないほどやらかす。
大きい声では言えないが、半ば確信的にやらかす。
 
立ちはだかる課題を前に、目を瞑らずとも、見えるか、見えないかくらいの「薄目」にして、自分にとって都合が悪いことを遠ざけるようとするクセがある。
 

今回の課題は、「マヤビニックの在庫数」だ。
 
当社は毎月月末に、コーヒー生豆を保管していただいている倉庫から、在庫数の報告を受け、棚卸しをおこなっている。
つまり、見慣れた在庫表であるにもかかわらず、その月、私がマヤビニックの在庫数として確認したと思っていた「14」という数字は、別のコーヒー豆のものだった。
(ちなみに、在庫表には、ロットナンバーは載っているが、銘柄は表示されない。)

私が本当は確認すべきマヤビニックのロットナンバーの隣には、8月31日時点の在庫数として、しっかり「1」の数字が刻まれていた。
でもそれを見逃していた。
もうそろそろ在庫が尽きるころではないかと頭をよぎっていながら、「14」在庫数を、信じたい私がいた。


重ねて、今年はマヤビニックの新豆の出港も遅れていた。
運の悪いことに(いや、これは運のせいにしてはいけない)、本来であれば9月入港の予定だったのだが10月にずれこんでしまったのだった。
でも、遅延も、これまでの経験上、「安易に想像できる」事態であることは確か。
例え、予定通り出港したとしても、コンテナ船は天候にも左右されやすい。
絶対はないのに。
 
マヤビニックが足りない。
 
その事実を直視したのは、倉庫に「マヤビニックを2袋」と書いて、出荷指示を送った直後のこと。
「在庫0です」
と戻ってきたFAXの文字を見て、こう思った。
 
「またやってしまった…」
 
そう、「また」なのだ。
「起業後8年」の古傷が、ちくちくと痛んだ。
 
 
この一年、わたしは、わたしなりに頑張って来たと思う。
多少の成長も実感している。

次の10年に向けての、新たなプロジェクトも動き始めている。
新しいことをやるためのメンバーも集まった。
経営者として、外部の勉強会で財務の勉強に励み、損益計算書と貸借対照表が理解できるようになった。(おい、しっかりしろ、経営者13年目!)
そして皆様が選んでくださったおかげで、これまで手の届かなかった目標売上の達成も、目前に迫っている。
 
それなのに。
いつだって、自分の「足りなさ」や「至らなさ」で現実を思い知る。
「まだ、ゆめのつづき」なんて言いながら、その夢が放つ灯りは、煌々と現実を照らす。

夢は、どこまでいっても、現実の延長線にある。

ご迷惑をかけている皆さまには、心からお詫びを申し上げます。
でも、言わせてください。
うちにはまだまだ良いコーヒーがたくさんあります。セスマッチのような、超主役級のコーヒーを、ぜひこの機会に見つけてあげてください。


2017年にメキシコに訪問した際の写真。セスマッチのオフィスにて。右端がSixtoさん。