ガーン!!!!
楽しみにしていたコアテペックに来たのに、スマホは忘れるわ、カメラにSDカードの挿入を忘れるわで、まったく記録を残すことができなかったことは、悔やんでも悔やみきれない。
でもメキシコ有数のコーヒー産地、その中でも良く知られるコアテペックに来て、いっぺんにこの街が好きになった。
とにかく街がコーヒーにあふれていた。焙煎機もあちこちで見かけた。
さっそく一軒目に、いかにも気難しそうなコーヒー屋に巡り合った。店内に入ると、さっと私を一瞥したものの、まったくの無言をきめている。PROBATの15kg釜が回転する音だけが店内に響いている。話し掛けるきっかけを探して、私は狭い店内をきょろきょろと見渡す。
「すべてベラクルスの豆ですか?」
と聞くと、全力で否定され
「No,全部コアテペック産だ。」
と言い直される。
コアテペックも含め、ベラクルスとひとくくりしてはいけないらしい。
グレード別、そして焙煎度合いによって豆が8つほどに分類されている。味見をしたくて仕方がないのだが、声を掛けられない雰囲気がある。
すると常連さんらしき人が入ってきて、3つの豆を指名買い。それも1kg単位ずつ。とても気さくな人で
「この店はコアテペックで一番だよ。間違いない!」
と言う。店主がようやくニヤリと笑った。
今回、ひとまずマヤビニックのみんなとカッピングをするために、いくつか買って帰ろうと思っていたので、Especialと書いてある一番高価な豆を250gいただくことにした。
ようやく店主も私の目をみて何やら話しかけてくる。自分はイタリアンローストがおすすめだ、とか、イタリアンローストと言っても、これはコアテペックローストだ、とかいうジョークを飛ばす。わはははは、と笑う私。
次に、やや色あせた写真のアルバムを私に見せて、何枚かの畑の写真、チェリー(赤い実)の写真、処理過程等々、
「いいかい、こうだろ、こうだろ、そしてこうなるんだ。」
と熱心に説明してくれる。
彼自身は、コーヒー畑のオーナーというわけではなく、いつも決まったところから生豆を購入し、焙煎豆として販売している。カフェ併設ではない、完全なるビーンズショップ。そこにも、彼なりのこだわりが感じられる。
「お店をはじめてどれくらいになりますか」
と尋ねると
「25年」
ときっぱり。きれいに焼きあがった豆を、いとおしそうに見せてくれた。
たまたま一軒目に入ったお店がそんな感じだったので、とても気分をよくして、次から次へとコーヒー屋に立ち寄る。前述のような豆売り専門店も多い。コアテペテック自体はこじんまりとしているのだが、程よく歴史を感じさせるコロニアル調の建造物が、このサイズの街にマッチしていて、XALAPA(ハラパ)より断然、肌に合う。何より、どこもかしこもコーヒーづくしなのが嬉しい。
そして、私は、何杯かのコーヒーを飲んで、そろそろ何か食べたいな、と思っていたところで、一軒の、簡素だけれど、スタイリッシュで、これは絶対間違いがなさそうだ、というコーヒーショップで足を止めた。そして、彼との出逢いこそ、私は必ずまたコアテペックに戻ってくるだろう、と思わせるほどに大きいものだった。