サンクリストバルに戻ってきたのは日曜日。
宿兼語学学校のオーナーが待っていてくれた。
「おかえり、トゥクストラはどうだった?暑かっただろう?」
といかにもサンクリストバルは素晴らしいだろ、と言わんばかりのテンションで尋ねてくる。
例によって長距離バスで冷えすぎた体は、外気に触れても温まる気配がない。
そうここは標高2200メートルの常秋の町。
それも日本の10月の終わりごろに等しい。
「トゥクストラは暑すぎるということもなく、とても良かった。
街は特に何もないけれど、過ごしやすかったよ。」
と私。
本当は、宿泊した宿がとてもきれいで快適だったのだが、なんとなく彼には素直に言えなかった。
「そうそう、タパチュラにも行ったんだね。コーヒーはどうだった?」
と彼。すでにFacebookでみてくれていたらしく、私に感想を求める。
「Muy agradable(とても素晴らしかった)!」
スペイン語のマリオ先生は「agradableは美しいスペイン語だ」としきりに言うので、私も積極的に使っている。
「それは良かった。夜行バスで帰ってきたのだから、よほど疲れているだろう。ゆっくりお休み」
と言って彼は去っていこうとした。
「ところで、竜巻の被害は大丈夫だった?」
そう、先週、私の新しいfacebook友だち(つまりこちらで出会った人々)の中で、サンクリストバルの竜巻被害の様子をアップしている人が何人もいて、気になっていたのだ。
「今朝まで家の電気が使えなかったんだよ。だから僕たちもここにステイしていた。」
そういって、彼は、コロンビア人の奥さんの方を向く。
「それは大変だったね。被害は大きかったの?」
「市街のはずれにあるマーケットの方の屋根が飛ばされたり、木造の建物が吹き飛んだりしたんだ。マーケットでは決して裕福とは言えない人たちが物を売ったりしているだろ?彼らがとても心配だ。」
そうだったのか・・・。
「You are very lucky」
竜巻被害があった日に、サンクリストバルにいなかったことは、ラッキーだと言った。そうかもしれないけど、そうじゃない気もする、と私は思った。
再び、彼に礼を言い、シャワーを浴びようと思ったのだけど、この宿のシャワーは気まぐれで、Hot waterが出る時間が極端に短いときがあり、髪を洗っている途中で、ぬるま湯に切り替わったときなどは、悲鳴をあげたくなるほどだった。
もう少し体が温まったらシャワーを浴びよう。
私は親しんだ部屋に戻ってきたのに、気持ちがなんとなく淀んでいる。どうやら私は今、「くそ暑い日本」に憧れている。寒いのは苦手だ。
うとうとしかけたころ、遠くの空が青く照り輝いてきた。
沈んだ気持ちは一気に晴れる。
Yes, I am very lucky.
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