今晩、拠点となるサンクリストバルを出て、ベラクルスに向かう。前夜(つまり金曜日の夜)、宿のオーナーの弟と、そのお友だちの家族(教会の合唱団というつながりらしい)が、ここ数日、私以外のゲストがいないこの宿に集結。
「きっと夜通し歌い続けるだろうから、避難した方が良い。」
とのススメ通りに、同じ建物内のペントハウスを与えられた私は、あまりの快適さに、今日昼すぎまでの時間を、のんびり部屋ですごした。お決まりの落語を聴く週末の贅沢な時間。その間、私の頭の中では、昨日のブログに書いた通り、ある思いに心が傾いている。
それは、
「彼らの手元にある豆を、日本のお客さまに届けたい・・・・」
という拭いきれない思い。
考えがまとまらない上に、14時から16時頃の窓をさす光の強さに怖気づき、外に出た。朝起きてからコーヒーしか飲んでいない。そのコーヒーというのは、昨日、あれだけ脅されたのに、あっさり0時過ぎには歌うのをやめて静まってしまった合唱団のひとりが、たまたま「僕の家で作っているコーヒーだよ」と言って手渡してくれたオーガニックコーヒー。そのときは、ありがとう、とあっさりもらってしまったけれど、案外美味しくって、先ほど、帰り際の彼を捕まえて、コーヒーについていろいろと尋ねたのだった。標高1500メートル。トゥクストラから1時間半くらいのところに、コーヒー畑を所有しているらしい。もちろん、見学可、とのことで、こちらも頭の片隅にいれつつ。さて何を食べようか。
少し歩けば、ありとあらゆるレストランや食堂にありつくのだが、グアダルーペ寺院から2~3分のところでさっさと済ませたかった。とっさに浮かんだのは、「パスタ」と看板を掲げる、座席数わずか3席のお店。
メキシコ料理で失敗してもまあ仕方がないか、という気がするけれど(実際、ローカルフードは、病みつきになるほど美味しいということもなければ、まずくて食べられない、というものもない)、パスタで外したら、きっと無理して食べる、なんてこともできずに大量に残すことになるな、と思いながら、思い切って入ってみたところ、大正解。よりによって、トマト系が多くを占める中で、一番厄介そうなカルボナーラを頼んだのだが、これがまた美味しかった。一番不安視していたフェットチーネが絶品で、できればもっと早く巡り合いたかったと思うほど。
「ボロネーゼは売り切れよ~♪」
と少し浮世離れした雰囲気のオーナーの言う、そのボロネーゼもぜひ食べてみたい。
その後散歩をして、上機嫌で宿に戻り、荷造りをする。ここに戻るのは約2週間後。まずはベラクルス。ベラクルスはメキシコでも有数なコーヒーの産地で、私は比較的交通の便のよさそうなコアペテックに向かうことにした。その後、メキシコシティから2~3時間の都市プエブラに入り、ラテンアメリカのコーヒーEXPOが開催されるとのことなので、それを見学し、そのあとは場所を移し、滞在の成果物をこしらえつつ、残りの期間に、何ができるかをもう一度練り直そうと思っている。
9月に入ったところで、来たるシーズンの収穫見込が出そろうということなので、その報告を受けつつ、私も、組合倉庫に眠る豆のことを、もう一度考えてみたい。
バスターミナル近くにある教会。夕暮れ時に撮影。
バスターミナル近くにある教会。夕暮れ時に撮影。