ラオス編 vol.1 「杉山世子の海外珈琲紀行」はじまりました。
ラオス編 vol.2 すべてを包み込む温かさと食欲よ
これで大丈夫だ。
ラオスからは左車線へと変わるため、私は右側の助手席に身をしずめ、半分達成感をおぼえながら窓の外を眺めていた。綺麗に整備されていたタイの道路と違い、車線のない一本道をひたすら走ることになった。
(なんだかんだで、たどり着けるものだな。)
などと思ったのも束の間、
持っていたスマホから目を上げ、正面を向くと、前方の車との車間距離は1メートルもない。そこからはまるでスローモーションのように、前の車にタクシーが突っ込んだのだ。
それほどのスピードは出ていなかったので、私たちはまったく無傷であったが、こちらが突っ込んでしまったものだから、非はこちらにあることは確かだ。そして、ぶつけてしまった車は、明らかに高級感が漂っている。
ラオス編 vol.2 すべてを包み込む温かさと食欲よ
20:30。
定刻を過ぎてもビクともしないバスに、ビクともしない日本人と乗客を乗せたバスがようやく動き出したのは20分が過ぎた頃だった。とにかくウボンを目指す。
そこから先?
なるようになるさ。
バスの中では寝ることしかできない。30度を超えるバンコクとは言え、バスの中はやっぱり冷房が効きすぎている。支給されたブランケットを覆うと、いつの間にか眠りにおちて、次、目を覚ました時には、空席だったはずの隣の席に、女性が座っていた。
定刻を過ぎてもビクともしないバスに、ビクともしない日本人と乗客を乗せたバスがようやく動き出したのは20分が過ぎた頃だった。とにかくウボンを目指す。
そこから先?
なるようになるさ。
バスの中では寝ることしかできない。30度を超えるバンコクとは言え、バスの中はやっぱり冷房が効きすぎている。支給されたブランケットを覆うと、いつの間にか眠りにおちて、次、目を覚ました時には、空席だったはずの隣の席に、女性が座っていた。
その後、バスが停まるたびに目を覚まし、そのたびに車内から、人がひとり、またひとりと、私が一生立ち寄ることがないであろうタイの片田舎の町に消えていった。
日が登ったころには、半数以上の乗客がいなかった。ともかく無事に夜が明けてホッとした。予想到着時刻よりは遅れたものの、ウボンのバスステーションに到着すると、ラオスから電話があった。国境までタクシーで行き、国境を越えて、時間短縮のためにそこから先もタクシーでパクセーまで来て欲しい、とのことだった。しかしながらウボンでタクシーらしきものがすぐに発見できなかった私は、タイ人にまみれて乗り合いバスにそそくさと乗車。しばらくすると国境が見え、そこで、私は見よう見まねで出国の手続きを済ませると、人生で初めて歩いて国境を越え、難なくラオスに入国したのだった。さらに、ラオス側での入国手続きを済ませると、電話で指示があったとおり、私の名前(ただしそれは目を凝らしてさえもよくわからない象形文字のよう)の書いた紙を持ったタクシードライバーと出逢えたのだった。
これで大丈夫だ。
ラオスからは左車線へと変わるため、私は右側の助手席に身をしずめ、半分達成感をおぼえながら窓の外を眺めていた。綺麗に整備されていたタイの道路と違い、車線のない一本道をひたすら走ることになった。
(なんだかんだで、たどり着けるものだな。)
などと思ったのも束の間、
あ!
持っていたスマホから目を上げ、正面を向くと、前方の車との車間距離は1メートルもない。そこからはまるでスローモーションのように、前の車にタクシーが突っ込んだのだ。
万事休す。
それほどのスピードは出ていなかったので、私たちはまったく無傷であったが、こちらが突っ込んでしまったものだから、非はこちらにあることは確かだ。そして、ぶつけてしまった車は、明らかに高級感が漂っている。
そのままゆるゆると、路肩に車を止めると、その無骨な高級車からは、想像もできないほど華奢な女性が降りてきた。(つづく)