ラオス編 vol.1 「杉山世子の海外珈琲紀行」はじまりました。
ラオス編 vol.2 すべてを包み込む温かさと食欲よ
ラオス編 vol.3 万事休す?
(Vol.3のつづき)
ラオス編 vol.2 すべてを包み込む温かさと食欲よ
ラオス編 vol.3 万事休す?
(Vol.3のつづき)
サングラスで目は見えないけれど、車から降りてきた華奢な女性は明らかに笑みを浮かべていた。まるで懐かしい友人に会ったみたいに、少し照れくさそうに、そして穏やかに彼らは話しを始めた。
警察を呼ぶとか、保険屋を通す、とか言った話ではなさそうで、どうしましょうねぇ、と今晩のおかずを決めるみたいに、ゆっくりとした話し合いが行われた。どちらかといえば損傷の大きかった加害者の方が、ショックが大きそうであった。
10分ほど、静かな時間が流れ、私は完全に今日一日の予定が吹っ飛んだと諦めかけた頃、物事は突然、それもいとも呆気なく解決を迎えた。
タクシードライバーが財布から1枚の紙幣を出すと(あとでわかったのだが、最高紙幣だとしても3000円程度とのこと)、にこやかに女性はそれを受け取り、お互いにやっぱり少し照れくさそうに、それぞれの車に戻って行ったのだ。私も慌てて助手席に戻り、何事もなかったかのように旅を続けたのだ。
その話を、後に合流したラオス人にしたところ、
「ラオス人は争いは好まないからです」
ときっぱりと言い切った上で、少し声を潜めるようにこう言ったのだ。
「ラオス人は争いは好まないからです」
ときっぱりと言い切った上で、少し声を潜めるようにこう言ったのだ。
「実は、ラオスの南部では、多くの人が黒魔術を信じています。誰かに恨まれたら最後。命を落としかねず、実際に何件もの謎の死が起っています。政治家たちもそんな理由から、南部のある地域には足を運びたがらないほど。だから、皆、物事を穏便に済ませたいのです。」
彼の説明に、コクリと頷く私。この国では、私もしとやかに振る舞おう、と心に誓うのだった。
やや傷心気味のドライバーが、無事に私を、待ち合わせの場所まで運んでくれた。お日様はまだ私たちのてっぺんにある。
やや傷心気味のドライバーが、無事に私を、待ち合わせの場所まで運んでくれた。お日様はまだ私たちのてっぺんにある。
私の長い一日は続く…。