藤香想のもうひとつの物語
2月12日にカフェをオープンされた藤香想。場所は要町のえびす通りを150メートルほど行き、左手に見える看板を左折し、しばらくすると、いかにも心地良さそうな木々に吸い込まれるように小道を入ると、白い一軒の民家カフェが佇んでいる。
穏やかな時間の流れるそのカフェのオーナーは本橋さん。2年前に出会ったときに、「カフェをやりたいんです」と話してくれた。その夢を実現した。
そのカフェには、本橋さんのもうひとつの夢が託されている。それは地域の人が集まる場所を作りたいという思いだ。
実は本橋さんのご実家は、国指定重要有形民俗文化財の「豊島長崎富士塚」の守り人でもあるのだ。
富士塚というのは、富士山を神の宿る地として信仰する人々の集まりである富士講によって、江戸時代後期以降、主として富士登山が困難な人々のために、江戸とその周辺地域に築かれたもの。
地域の文化、そして文化財を守る人として、この地にカフェを誕生させ、それらを継承していく役目を担う本橋さん。
藤香想の扉を開けた瞬間に、東京23区にいることを忘れ、どこか懐かしい空気に包まれる。それは、この「村」への、地域の人たちの愛着を肌で感じるからかもしれない。