先日、出版社の名まえで大きな封筒が届いた。Amazonで注文もしていないのに、本らしきものが届く不思議。
(書いてもいない)自分の本が届いたのかな?
と一瞬、恐ろしい錯覚を起こしつつ開封すると、「〇〇さん(私が慕っているロースターさん)からの紹介で送りました」というメモとともに、『わたしがカフェをはじめた日。』という本が入っていた。
(書いてもいない)自分の本が届いたのかな?
と一瞬、恐ろしい錯覚を起こしつつ開封すると、「〇〇さん(私が慕っているロースターさん)からの紹介で送りました」というメモとともに、『わたしがカフェをはじめた日。』という本が入っていた。
週末、時間ができたので、厳かに本を開いたみる。いつもの癖で、黄色の蛍光ペンを握りながらページをめくる私。学生時代の論文を読むときのスタイルは、こうやって今なお継承されている。本当にスタイリッシュじゃない思う、私のこういうところ。
この本は、簡単にいうと、京都でカフェをやっている人たちへのインタビューをまとめたもの。ただ単に流行りのカフェを取り上げた風でもなく、京都「ガケ書店」の店主、山下賢二さんが編集ユニットを組み、取材をし、自費出版したものが始まりだという。
ガケ書店という書店の名まえや自費出版というワードだけを見ても、アクの強さとか、「咽かえる個性」で圧倒されてしまいそうだけれど、読み進めるうちに、登場人物たち(カフェをやっている彼女たち)のたずまいというか、ゆるぎなさとか衝動とかに、憧れを感じている自分を発見した。
カフェをチェーン展開して儲けてやろう、とか、地域ビジネスのマーケティングなどと言った「東京でもっとも優先されるお金の話」(*吉本ばななさんが最後に寄せている文章より抜粋)とは真逆の、「カフェだけで成り立たせることもなく、バイトもしながらカフェを続けていければよい」みたいな脱力感と、それに相反する意思があって、自分らしく生きるってこういうことなんだよな、なんて思わせてくれる一冊である。
たくさんの人が薄ぼんやりと「カフェをやってみたい」「雑貨屋さんをやってみたい」という夢とも言えない夢を持っていると思う。それを実現させるものは、いつ来るともわかぬ「衝動」かもしれない。私たちが、生活の中で抱えている「不安」や現実への「疑問」(このままでいいのかしら、みたいなもの)が、ある地点に達したときに、思いもかけない「衝動」を呼び起こすのだろうか。
そういえば、私にも実感がある。衝動によって導かれた「未来」は、いつだって私の人生を退屈から呼び覚ましてくれた。
この本は、「カフェとかやってみたい」と口癖のように言っている年下の友だちと、子どもに学力を備え付けることで人生をなんとかさせようと思っている友人に読んでもらいたい一冊である。