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2015年8月1日に静岡県浜松市で開催された「フェアトレードの市民セミナー」のアンケートを主催者の方が送ってくださり、さっそく拝見させていただきました。
土曜日のお休みを利用して、わざわざフェアトレードセミナーにいらっしゃる方々なので、皆さん、関心が高く、また情報感度の高い方が多いのだと思いますが、そういう方が、「もう一歩先」に何を求めているのか。
貴重な回答の中から、私にとって、突き刺さるコメントがありました。
今日はそのひとつをご紹介。
それは、
「なぜ日本でフェアトレードの購入が広がらないのか。そのためにはどうすれば良いのか?」 |
これほどシンプルで、且つ重要な問いはありません。
でも、実際、フェアトレードを通してコーヒー豆を流通している身であっても、本当の意味で、この核心を突き詰めたことがあっただろうかと思うのです。反省・・・。
▶︎ 国別のフェアトレード商品購入金額の比較
2015年の国際フェアトレード認証ラベル製品の販売金額は約73億ユーロ(9812億円以上)、昨年の約59億ユーロ(8300億円以上)に引き続き、世界中でフェアトレードの取引量が増加しています。
2015年の国民一人当たりの国際フェアトレード認証製品の購入金額。日本とスイスやアイルランドなどのヨーロッパを比べると、その差は歴然ですね。こうやって数字だけ見るとかなりインパクトがありますが、一方で「まあ、そんなもんだろうな」と思うところも、正直あったりして・・・。
▶︎「フェアトレードだから」という消費選択
私自身も、「フェアトレードだから」という視点で、消費選択をしていないことに気付いたのです。
AとB、同等のものがあって、片方がフェアトレード商品であれば、迷わずそちらを選ぶのですが、あえてフェアトレード商品を探しながら、買い物をしているわけではありません。特に衣料品に関しては、ある程度意識をして購入してはいますが、すべてがフェアトレードの衣料品とは言えません。『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~』は鑑賞済みの私でさえ、この有り様です。
『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~』 http://unitedpeople.jp/truecost/director |
▶︎ スーパーマーケットのコーヒー
当日、講義してくださった佐藤先生のお話しによると、イギリスのメジャースーパー(紹介されたのは「セインズベリー」)には、コーヒー売り場の半分が「フェアトレードコーヒーコーナー」なんだそうです。では、日本でも、もっとスーパーマーケットにフェアトレードコーヒーを置けばよいの!?というと、それはまた違うような気がします。
実際、FLOラベル付きのコーヒー豆とかも売ってますけど、スーパーでコーヒーを買う行為は、コーヒー屋からしたら、なかなか勇気のいることだと思うのです。
というのも、
・「有機ブラジル」とかって情報がざっくりしている
・賞味期限が1年もあるから少し不安(いつ焙煎したんだろう?ってなる)
・フェアトレードラベルが貼ってあっても、生産地の背景がよくわからない
などなど
なので、ぶっちゃけスーパーでコーヒー買っている人は、コーヒーが好きだと思いますけど、それほど頓着はないんだと思います(スーパーでコーヒーを買うなんてけしからん、っていう話ではありません。)
でも、スーパーマーケットでコーヒー買う人は、コーヒーだったらなんでもいいのか?というと、もちろん、そういうわけではありません。
実際、今ではうちのコーヒーしか飲まないという私の友人(私がまだコーヒー屋になる前からの付き合い)は、いつもドラッグストアでマキ〇ムの「イタリアンロースト」っていうコーヒーを買っていました。コーヒーの仕事に携わる前から、ドラッグストア(及びスーパーマーケット)でコーヒーを買う発想がなかった私は、その友人に
「なんでそのコーヒーを買っているの?」
と聞いたら、
「(ドラッグストア及びスーパーマーケットの商品の中で)いろいろ試したけど、このイタリアンローストが一番おいしいよ」
と言っていました。なので、単に安いとか、手軽に買える、とかではなく、スーパーマーケットのコーヒーコーナーの中で、マキ〇ムの「イタリアンロースト」は選ばれしコーヒーだったのです。
何が言いたいかといえば、
「コーヒーは毎日飲むくらい好き!」 「周りが引くくらいコーヒーが好き!」 |
という人も多いわけです。その友人もそうでした。
さらに、
「近くに入りやすい自家焙煎店があれば、そこでたまには買うかもしれないけど、近くにそういうお店もないし、スーパーマーケットに行けば、ほぼ確実に手に入る購入のしやすさから、スーパーマーケットでコーヒーを買っているだけ。」 |
という感じもうなずけます。そして、よく行くスーパーマーケットやドラッグストアで、自分の好みコーヒーを見つけているのです。
それは、
「他にめっちゃ美味しいコーヒーがあるかもしれないけど、同じ量で倍以上価格が違っても、自分は倍以上の価値(差)を感じることはできないと思う。だってそこまで「通」じゃないし・・・」 |
と、言う人もいるかもしれません。これはあくまでも想像ですが・・・。
スーパーマーケットだと、フェアトレードのコーヒーは一般的なコーヒーに比べて200円~300円くらい値が張ります。
スーパーマーケットで、マイルドブレンドとイタリアンローストの差額が、例えば50円くらいだとしたら、50円余分に払ってでも、イタリアンローストにする、という人はいるけれど、200円~300円余分に払って、「敢えてフェアトレードコーヒーにする」、という人は、日本にはあまりいないでしょう。
だからこその「日本:年間購入金額79円」なわけで・・・。
でもきっとイギリスではいるんですね。「200円~300円しか」違わないのであれば、フェアトレードの物を選ぶよ!という人が。
はっきり言ってスーパーマーケットで売っている200g、740円のフェアトレードコーヒーよりも、豆乃木のオンラインショップ『フェアトレード&産直マーケットTe to Te(てとて)』のメキシコ・マヤビニックコーヒーの方がその1.5倍高いです。
でも、受注焙煎だし、好みのロースト度合いをある程度選べるし、誰がどこで作って、どんな人が販売しているかもわかるし、無農薬だから安心だし、ってことで皆さん、その1.5倍を支払ってお求めいただいているのでしょうか?それに、フェアトレードみたいだし・・・・ってことを評価していただいているかもしれませんが。
なぜ手にしていただけるのか、とても有り難く、そして不思議でもあります。
ありがとうございます!
ここからはあくまで私の想像の中ですが、スーパーマーケットでフェアトレードコーヒーを買うイギリス人は、フェアトレードありき、で購入しているのだと思うんです。もちろん、数多くのフェアトレードコーヒーの中から、お気に入りのテイストを見つけているとは思うのですが、でも初めに「フェアトレードありき」で選んでいる・・・。
でも多くの日本人は違う。
自分の求めている風味、価格、コンセプトetc・・・をシビアに選択します。
その中で選ばれるものがたまたま「フェアトレード」のものだった、という具合が、日本で、フェアトレードを普及させようと思ったら、一番しっくりくる。
だとすると、たまたま手に取れる場所に、フェアトレード商品を置く努力をするしかないのでしょうね。
(でも、スーパーで、賞味期限が「2016年〇月△日」なんて、とんでもなく先のものを、1200円で置いてあっても、まあ買わないだろうな・・・。私だったら、買わないもの。)
では、
「200g 500円のコーヒーをフェアトレードで作れるのか?」
現状の品質のものを提供する、というのでは、絶対に無理。
無理無理無理!!!
でも、お客様が必要とする「価値」に沿った、買い求めやすい状況を作る努力は、もっともっと必要だと思う。
今はそれしか言えないけれど。
「なぜ日本でフェアトレードの購入が広がらないのか。そのためにはどうすれば良いのか?」
重要な問いを思い起こさせていただいたことに、改めて感謝です。