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第8話「<回顧録>こうしてマヤビニック豆の対話・交渉が行われる・・・PART2」

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News & Columns お知らせ

当社では少量から、フェアトレード及び無農薬栽培された
コーヒー豆を卸売り価格にて販売させていただいております。

杉山世子の【メキシコ滞在記】

2013/06/12

第8話「<回顧録>こうしてマヤビニック豆の対話・交渉が行われる・・・PART2」

旧ブログからの転載です。

第8話「<回顧録>こうしてマヤビニック豆の対話・交渉が行われる・・・PART2」

マヤビニック組合長の似顔絵入りポスター

ひとつ間が空いてしまったけど、マヤビニック生産者協同組合の事務所にて、いよいよ来年の豆の買付けの話がはじまった。ここからは結構生臭い話になる。

まずマヤビニック組合のルイスに私から
「率直に言って、透明性のあるトレードをするために、私としては来年の豆を自社名義で買い取るべきだと思っているし、そのつもりでここに来た」
と、もっとも伝えたいことを、まず伝えた。

豆乃木(弊社)は、愛知県にあるコーヒーロースターに輸入をすべてお願いしている。
弊社は、唯一、マヤビニック組合との連絡係・価格交渉を担っているが、資金力や販路に乏しかったために、愛知県のロースター頼みで輸入をしてもらっているのが現状である。

しかし、自社単独でまずは100体(7トン)を1年間で販売する、という見通しが立った今、なんとしても、自社名義で透明性の高いトレード(これで本当に胸を張ってフェアトレードであると言える)をしたいと意気込んでいる。

ルイスはうなずいて、私の話を聞いてくれた。
そして昨年の我々の問題点も指摘してくれた。やんわりとだが。
要するに、我々はいつも後手で、マヤビニック組合としては、判断がし兼ねるのだと思う。


「欲しいのか、欲しくないのか」


そしてその判断を遅くさせる理由は明白だった。
それは、豆乃木が自社で決断できないことにあった。
でも、来年こそは、なんとしても、収穫直後にメキシコを出港させ、5月には豆を入港させたい。

そして世間でグアテマラやメキシコのニュークロップが出る時期に先駆けて、
「マヤビニックのニュークロップ上陸」を知らせるのだ。待ってくれているお客さんはたくさんいる。

「ルイスの懸念事項はよくわかった。
ではもっとスムースに輸入の段取りをつけるためには、何月にオファーすればよい?」

「10月に関心表明をして、1,2月に契約を結ぼう」

「OK。でもこれだけはお願い。私のお客様が望むような豆をぜひ提供して欲しい。そのために、こちらも段取りをする。農園単位で分けるのが現状では難しいということだけど、せめて地域ごとに区分けして欲しい。それから、来年の豆からはグレインプロ*を使用して欲しい。」
(* 厚手のビニール袋。バキュームパックよりも低コストで、それなりに鮮度を保つことができる袋。)

「う~ん、それは考えさせてほしい。
ところで、グレインプロってなんだい?」

「グレインプロは今や、世界のスタンダードだ。これがあれば前回の輸入時に発生したような結露も防げるかもしれない。」

「わかった。そこはできるようにする。」

「あとで、グレインプロについてメールで情報を送るよ。」

「わかった。」

「ルイス。最後に一言、言わせて欲しい。私の力では今は100体が精いっぱいだ。でも、このまま現状に甘んじるつもりはない。コンスタントにフルコンテナ(17トン位)輸入できるよう、努力を重ねていく。なんて言ったって現状、豆乃木はマヤビニック専門店だからね。」

「それは分かったけど、マヤビニックとしても、輸出できる量に限界がある。オーガニック豆は北米やヨーロッパのバイヤーも必要としているから、必ず確保できるとは限らない。」

「・・・わかった。でも私もあきらめるつもりはない。

そう言って、私はノートを閉じた。

こうやって振り返っても、大した話はしていない。
それにコーヒーに関する細かい指示も注文もしていない。
価格についても触れていない。

これは私がまだ交渉人として未熟であること、そしてコーヒービジネスを理解していないことも原因かもしれない。さらに、マヤビニックという組合がまだ発展途上であることを指すのかもしれない。かといって、フェアトレードに徹するために、品質は二の次で良い、などとは思っていない。
でも、はっきりわかっていることは、品質を求めるあまり、相手の状況を無視することはできないということ。
というのも、マヤビニック組合の中で、
「この農園はすばらしいから、この農園とだけ契約をしたい」
という考え方は今のところ、通用しない。
彼らは、とても神経質だ。
私自身、確信しているわけではないが、マヤビニックの組合運営の中で「平等」と言う概念は非常に大切な要素のようにみえる。
まだ、私にはそのあたりの感覚がわからない。もっと知らなければならないのだけど、わからないからこそ、そこを無視して正面突破する勇気はない。

これは尊重なんていう礼儀正しさではなく、私の未熟さでもある。

ひとまず、今は10月に向けて動き出している。
いや、実際は目の前のことで手一杯だけど、絶対果たさなければならない目標が出来た今、私に迷いはない。

「あとはやるだけだ!」
と席を立ったとき、ルイスはふと、こんなことを言った。

「コミュニティを見に行こう。」

「え?」


そう、コミュニティとか、事務所から1時間半かかる「コーヒー畑」すなわち、「産地」のことだった。