少しセスマッチという組織についても、触れておきたい。
セスマッチの組合員は、4つの市、30を超える集落に670世帯で構成されており、世帯数では、マヤビニックとさほど変わりはないけれど、1件あたりの栽培面積はマヤビニック3倍以上(つまり3ヘクタール以上)。
セスマッチが活動を展開している地域は、シエラマドレ山系のエル・トゥリウンフォ生物保護圏のコア地帯と緩衝地帯にあり、119.177ヘクタールに及ぶエル・トゥリウンフォ生物保護圏は、1990年3月13日に設定され、1993年にはユネスコの人間と生物保護圏プログラムの国際ネットワークに加盟しているとのこと。
彼らの活動ミッションには、
「コーヒーの小規模農家のための地域組織として信頼され、①コーヒーの市場と消費者に、総合的なサービスと製品を提供し、②集落とエル・トゥリウンフォ生物保護圏の天然資源を保護することで、チアパスのシエラマドレ山系の地域経済及び社会の改善に貢献すること」
とあり、彼らが自らをエコファーマーと名乗ることは十分にうなずける。
今日、コーヒー豆の乾燥には、天日乾燥だけではなく、ドライヤーによる機械乾燥をおこなっているかどうか聞いたときに、このエリアが十分に乾燥しているからドライヤーは必要がない、という回答とともに、
「できるだけ(マシンを動かすための)化石燃料は使いたくない」
と言ったこともうなずける。
彼らがおもしろいのは、自然保護一辺倒のコーヒー栽培計画を持つのではなく、この自然環境を活かして、積極的にスペシャルティコーヒーを作っていく点にある。これぞ、ポスト・スペシャルティコーヒー。
今回は2つの集落を見て回ることができたが、すでに収穫を終え、視覚的にはそれほど大きな収穫はなかったけれど、実際に、コーヒーの木々が植えられている場所に入り、土を踏み、天を仰いだときに、陽を遮るバナナの木を見ると、熟した赤い実が、どんな風に私たちを満たしてくれるかは容易に想像がついた。
最後に、育苗を見学。
すでに農家さんに配り終えているということで、がらんとしていたのだが、大きな施設に唯一残されていたのが、「ゲイシャ種」の苗床で、こちらもすでに各農家さんに配布され、栽培が始まっているようだ。
セスマッチの2~3年後が楽しみでならない。