私が知る限り、メキシコのコーヒー栽培のポリシーは何よりもまず「さび病対策」である。
今から4~5年ほど前に、チアパスもその深刻なサビ病に直面した。そのとき、マヤビニック組合に至っては収穫量は40%減、カビの空気感染により、葉が枯れてしまい、再生できなくなった木は、植え替えるしかなかった。そのときに、はじめて聞いたのが「ガルニカ」という品種だった。
聞きなじみがないガルニカという品種を調べてみると、ムンドノーボとカツーラのハイブリッドであることがわかった。
ガルニカは1960年にMexican Institute of Coffee(INMECAFE)によって開発されたメキシコ原種のもの。
特徴としては、収穫量が多く、通常、木を植えてから3~4年をかけて収穫できるようになるのだが、ガルニカは2~3年で収穫ができるようになるという。
さび病から4~5年を経て、当時植え替えたガルニカも、すでに収穫されている。
もちろん、カップも試したいけれど、まずは実際、この目でガルニカの木を見てみたいと組合に申し出ると、ある生産者の家庭を訪ねることができた。
訪れたマリアノさんの家庭は、電動パルパーが装備されている点で、マヤビニック組合の中ではそれなりに整った環境で栽培がおこなわれている。水槽もマヤビニック組合の中では広めなので、収量も結構あるのだろう。
木はまだ幼木であるが、収穫期をすぎているので、実の付き方などは確認できなかったが、いくつか残っている豆を取ってみると、ずんぐりとした実の形であることがわかった。
品質はどうなんだと確認したら、あまり明確な答えがなかった。
つまり、彼らにとって、現段階では、さび病対策が第一、品質はその次なのかもしれない。
買い手の立場から言えば、カップに特別なキャラクターを求め、クリーンでシルキーなコーヒーを買い付けたい。ただ、実際に、4~5年前の悲惨のサビ病の状況を目にしているだけに、これが「産地の現実」なのだ。
あきらめるのではなく、その中での最良が何かを、我々は考え続けるべきだ。その中で、信頼関係を積み上げ、「カップクオリティー」という価値観を共有していけるのではないかと思う。