La Paluma(ラ・パルマ)へ
2018年12月12日。空はよく晴れていた。週間天気予報で気温をチェックながら、「暑い暑い」と想像していたサンサルバドルでは、長そでのジャケットが必要だった。
初日は、ラ・パルマへ。
今回、プログラムを組んでくださったのは、中小零細企業の経営・品質・生産性向上支援人材能力強化プロジェクトで一村一品運動を推進するJICAのU専門家。わたしが青年海外協力隊時代に、マラウイで取り組んでいた一村一品運動でも、お世話になった方だった。
一村一品運動と言えば、わたし自身も、活動に携わったあと、大学で2年間、マラウイやケニア、大分県に渡り研究をし、それをもとに、卒論を書くほど、没頭していた時期があった。今では、その運動は中米で盛んになり、今回、エルサルバドルの「一品」となるコーヒーの視察に繋がった。
コーヒーを愛する男、ドン・カルロス
そして、U専門家が最初に案内してくれた人物こそ、ドン・カルロス。ラ・パルマでコーヒー栽培から、コーヒーの焙煎、販売までを手掛ける個人起業家だ。
エルサルバドルと言えば、やっぱりパカマラ種をみておきたい。さっそくカルロスさんの畑で栽培されているパカマラの木を見に行くことになった。
パカマラ
エルサルバドルで生まれた人工交配種のこと。同じくエルサルバドルで生まれたブルボンからの突然変異種「パカス」と、ティピカから生まれた突然変異種「マラゴジッペ」を交配させたものが「パカマラ」だ。
ドン・カルロスの畑で
カルロスさんの畑では、パカマラの他に、Cuscatleco(クスカトゥレコ)という品種も栽培されていた。メキシコではSarchimor(サチモール)と呼ばれているものと同一とか。
その後、カルロスさんの畑からカルロスさんのラボへと移動。彼のラボは、彼のコーヒーに対する愛情で満ちていた。
例えば、手製の焙煎機。1号機から試作を重ね、今年完成させたという2号機。カルロスさんの誇らしい表情が印象的だ。さらに、「ウェットミル(一次処理過程の果肉除去)」は玄関先で確認したのだが、「ドライミル(二次処理過程の脱穀作業)」はどうしているのかと尋ねると、こちらにおいで、と言ってバルコニーにいざなってくれた。
手製の焙煎機(2号機)
とても誇らしげに自家製の焙煎機を紹介してくださった。カルロスさんのコーヒー熱が伝わってくる。
ドライミルもお手製
小型のドライミル。こちらは、1度ドライミルにかけたものを、さらにもう一度いれなおして2回機械に通している。こちらもお手製というから驚く。
今季収穫のパカスをカッピング
ドライミルもカルロスさんのお手製だという。つまり、コーヒーの栽培から、1次、2次処理を経て、焙煎、パック詰めまで、すべてカルロスさんの手によって完結していることがわかる。焙煎豆を見せてもらい、かじってみる。とてもきれいに焼けている。さっそくコーヒーを飲んでみよう、と、カルロスさんの奥さんがフレンチプレスでコーヒーを淹れてくれた。続いて、カッピング。まだパカマラの収穫ができていないが、パカスだったらある、ということだったので、パカスもカッピングができるようにお願いした。これが、実によかった。しっかりとした香味、そしてボディがあって、華やかだった。
カルロスさんの奥さんが淹れてくれたコーヒー
フレンチプレスで淹れてくれたコーヒーとともに、カルロスさんの奥さんが作ったgalletas(クッキー)もいただく。甘すぎないのが、日本人の好みにぴったりだとお伝えする。
カルロスさんのコーヒーをカッピング
カルロスさんと一緒にブルボンとパカスの2種をカッピング。カルロスさん自身も、昨日焙煎したばかりのパカスのカッピングは、今季はじめてとのこと。パカスの華やかさ、写真から伝えられないのが残念。
さあ、どうしよう。またすばらしいコーヒー生産者のつくる、おいしいコーヒーと出会ってしまった。
しかし、例えば、カルロスさんのコーヒーは、本当に私が取り扱うべき豆なのだろうか。車に乗り、葛藤している間も、カッピングしたときのコーヒーの余韻が、口の中に広がっていた。