ホテルにチェックインを済ませたのだが、なんとなく小腹が空いていた。
近くに、手軽なタコススタンドはないかと、ホテルのスタッフに尋ねると、この辺りにはない、と言う。1ブロック先にスターバックスの看板が、その先にバーガーキングの文字が見える。
ではどこか良いところを知らないか、と聞くと、マリンバ公園を紹介された。ここはトゥクストラでは有名な公園で、私もかつての滞在のとき、近くを通りかかったことがある。
「この時間でも、まだ演奏しているの?」
と尋ねると、まだ20時にもなっていないじゃないか、何を言っているんだ、夜はこれからだよ、という雰囲気で、
「もちろん!」
と答えてくれた。
私は33時間の長旅を経ていたが、シャワーも浴びず、歯磨きだけ済ませると、10分もしない内に外に出た。まだ一日を終わらせたくなかったし、明日は日曜日だ。明日、ゆっくりと過ごせば良い。
ホテルに待機しているタクシーに
「パルケデラマリンバ(マリンバ公園)」
と告げた。
トゥクストラの市の中央部にある公園で、ホテルから10分ほどで着いた。
公園というよりは広場、という感じで、その広場の中央が少し小高くなっていて、メリーゴーランドの馬だけがいないような形でステージがあり、その中で人々が演奏をしたり、マイクパフォーマンスをしている。
ステージの下にはたくさんのカップルが、手を合わせ、音楽に合わせてゆらゆらと揺れていた。文字にする以上に、のどかな景色だった。
さらにその周りに椅子が並べられていて、家族連れやお年寄り、若いカップルまで、オールジャンルの人びとがそこにいて、なんとなく揺れたり、ものを食べたり、お喋りをしたりしている。
土曜日の夜だからなのか、と後でタクシードライバーに尋ねると、
「毎日さ、毎日!」
と誇らしげに教えてくれた。
私は広場が眺められ2階の席があるタコス屋さんで、タコスを4枚、そして豆の入ったトマトスープを頼んだのだが、案の定、それは頼みすぎで、その半分を持ち帰ることになった。
「1時間後に、この場所で」
と約束をしていたタクシーを、私はまったくあてにしていなかったので、1時間後に店を出て、降ろしてもらった場所あたりで、良さそうな乗り物を探していた。心のどこかで、こうしている間に、もしかして戻って来てくれたらラッキーだ、くらいには思っていたのだが、1時間を5分ほど過ぎた頃に、低くクラクションが鳴った。
私は、驚きつつも、「あなたを待っていましたよ」という態度をとり繕い、お礼を言って、車に乗った。
「どうだった?楽しかったかい?」
と、まさか私が他の車を探していたとは思っていないであろうドライバーが、笑顔で尋ねてきたから
「とってもとっても楽しかったよ」
とオーバーに答えた。
私は、また少しだけメキシコを好きになった。
それにしても、私はなぜ、「来るはずがない」と思い込んでいたのだろう・・・。
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かつてのブログに書き記してきた滞在記も少しずつ転記しています。
ものの見方やコーヒーに対する視点・考えなども、今からみるとかなり違和感のある文章もありますが、それも含めてお読みください。
http://www.hagukumuhito.net/news/?mode=list&cat=10&&page=3
旅の写真はFacebookにて随時アップする予定です。
https://www.facebook.com/mvcoffee/
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