(前回の記事は「杉山世子海外珈琲紀行 (LA編 vol.1)」より)。
1軒目の「STUMP TOWN COFFEE ROASTERS(スタンプタウンコーヒーロースターズ)」でバリスタに、
「ここから徒歩10分未満のところに、「Blue Bottle Coffee(ブルーボトルコーヒー)」があるから行ってごらんよ。」
と教えてもらい、2軒目は「Blue Bottle(ブルーボトル)」へ。何分、大した調査もせずにLAに来てしまったので、その名はリストには入っていたものの、距離感がわからないままだったが、歩いてみるとたしかに10分もかからない距離に「Blue Bottle Coffee(ブルーボトルコーヒー)」はあった。
この地区はアーツ ディストリクトと呼ばれ、アーティストが集うエリアのようで、「Blue Bottle Coffee(ブルーボトルコーヒー)」の前はHandsome Coffee Roastersだったところとして知られている。
調べている段階では、このエリア一帯への興味もあり、どんなところだろうと想像を膨らませたのだが、「STUMP TOWN COFFEE ROASTERS(スタンプタウンコーヒーロースターズ)」から歩いて「Blue Bottle Coffee(ブルーボトルコーヒー)」を向かっていくと、人どおりもまばらで、真昼間にもかかわらず、なんとなく心地悪いものがあった(初めての場所、それがまして外国ともなると、どこへ行くのも不安はある)。
しかし「Blue Bottle Coffee(ブルーボトルコーヒー)」まで来ると、ベビーカーで来店している女性から、サングラスにスーツを着用し、コーヒーをテイクアウトをする人、そしてカジュアルな格好でmacを広げる人まで、同店を「普段使い」しているお客さんで程よく賑わっており、ようやく一息ついた。
私は朝から何も食べていないことに気づき、「カフェ・ラテ」とパウンドケーキを注文して席に座る。大きなテーブルには、アジア系の顔立ちをしたふたり組が何かの打ち合わせをしていて、私が席につくとすぐに、小ざっぱりとしたおしゃれな若い男性が空いている左隣に座った。
いただいたばかりのカフェ・ラテを飲みながら、早くも次の店をサーチしようとしたところ、店にwi-fiがないことに気が付く。すでに13時をすぎていて、16時には空港へ戻らなければならない。空港から1軒目まで2時間かかったことを考えると、そろそろ帰路を考えた方がよいかもしれない、と隣の「小ざっぱりとしたおしゃれな若い男性」に声を掛ける。
「Excuse me, ここからユニオンステーションの行き方ってわかる?」
「ユニオンステーションね・・・ちょっと待って」
といって、彼は開いているmacで調べてくれる。
「歩いて行けないこともないけれど、少し複雑かな」
と言って、画面上に地図を開いてみせてくれる。
歩きながらだとネットが通じないから、ちょっと難しいかな、と言うと、彼はこう訊ねた。
「Taxiで行けばいいのに。Uber使ってる?」
「Uberって何?」
「タクシーを呼ぶアプリだよ。それを使えば、現在地と行き先をいれるだけで、目的地まで連れて行ってくれるよ」
「あ、それ聞いたことある。でもこのお店、ネットつながってないから、インストールできないね。」
「ボクのスマホでテザリングするから、使えば」
「え、ほんと?ありがとう!」
そんなやりとりを経て、彼の電話からテザリングをさせてもらう。
無事にアプリをインストールし、設定を行うと、現在地から空港まで20数ドル、40分程度で連れて行ってくれることが判明。
「信じられない!私、ここへ来るのに、2時間もかかったんだよ」
「Uberは本当に便利だよ。僕もBarに行くときはよく使ってる」
「これは革命的!これだったら、私、もうどこへでも行ける気がする。Thank you so much!」
と言って礼をすると、
「ドウイタシマシテ」
と日本語で。
「あれ、どうして日本語喋れるの?」
「大学で日本語少し勉強したから」
「珍しいね。何のために?アメリカで日本語使えるシチュエーションってある?」
「・・・特にないんだけどね」
「だよね!」
「でも今度はじめて日本へ行くよ。」
「もしあなたが日本で困ったことがあったら、私も助けるから、連絡ちょうだい。」
そう言って、私は名刺を取り出して彼に渡した。
そして、彼に
「さっき、「STUMP TOWN COFFEE ROASTERS(スタンプタウンコーヒーロースターズ)」に行って、このお店を紹介してもらったんだけど、あなたのオススメはどこ?」
と聴くと、リストの3番目にあったお店を
「ここはsuper famous(超有名)だから、僕はあまり好きじゃないんだ。」
という角度で、私が次に行こうとしていたお店を却下した。
「ここはどうかな?」
といってすすめてくれたのがG&T。
「肝心なこと聴くけど、G&Tはwi-fi使える?」
「もしかしたら、使えないかも。でも姉妹店があって、Go get em tigerはwi-fi使えるよ。」
旅の救世主によって、私のLAの旅は一気に活気づいた。タイムリミットは迫っている。私は教えられるがままにUberを使い、3分後に「白いプリウス」が到着することを確認すると、彼に深々と礼をして通りに出た。間もなくすると、「白いプリウス」がやってきて、私は難なくGo get em tigerへと向かった。
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