Javascriptが無効になっているため、正常に表示できない場合があります。

【DAY2】 メキシコ滞在記 日曜日のサンクリストバル

login

News & Columns お知らせ

当社では少量から、フェアトレード及び無農薬栽培された
コーヒー豆を卸売り価格にて販売させていただいております。

杉山世子の【メキシコ滞在記】

2014/07/27

【DAY2】 メキシコ滞在記 日曜日のサンクリストバル

豆乃木杉山は7月26日より2か月間メキシコに滞在します。日々のことを綴ります・・・

【DAY2】 メキシコ滞在記 日曜日のサンクリストバル

ロケーションもわからずに泊まった宿を出て、すぐに流しのタクシーを捕まえた。
 
「サンクリストバルにバスで向かいたい。」
 
というようなことを、スペイン語のような英語、英語のようなスペイン語で伝えたかったのだが、逆に運転手は、私にふたつの選択肢を投げかけてきた。
 
何かがAで、何かがB。
 
内容はよくわからなかったが、しかしニュアンスでBを選択すると、バスよりは幾分小さく、コレクティーボと呼ばれる乗り合いよりはいくらか大きい、サンクリ行きの乗り物に当たった。
 
想定していた乗り物とは違うけれど、とにかく目的地に辿りつければ良しとしよう。私はたくさんの荷物と共に、その中途半端な大きさの乗り物に積みこまれた。
 
薄暗い車内では、膝が前の座席にぴったりとくっつくこと以外は快適で、窓の外の景色を眺める余裕もある。ああ、これが二度に渡って崩壊したという橋か、と不吉なことを思い出しながら。さすがにもう眠気はない。
 
想定よりも早くサンクリに到着し、いつもの定宿を目指す。標高2000メートルのこの街は、日本の秋を思わせる涼しさ。薄手のパーカーでは少し肌寒い。
 
それにしても、知っている街に来られたことで、気持ちが和らいでいくのを感じる。しかしそれも束の間。さて、これから何をしようか。今日は日曜日。世間は休息日なのだ。
 
いきなりマヤビニック組合が経営するカフェに入るのも芸がない。ここには、夕方に行くことになっているので、しばらく街を散策することにした。
街を歩き、昼ご飯にタコスを食べ、レモネードを飲み干すと、すでにやることがない。小さな町だ。宿に帰って、昼寝でもしようか。さっそくそんな思いに駆られる。とっくに空になったグラスが、店員に運ばれることもなくテーブルに居残るように、私も、日本から持ってきた文庫本をパラパラとめくり続けていた。
 
日が傾きはじめた頃、マヤビニックカフェに向かう。見慣れた顔が笑顔で迎えてくれる。でも挨拶程度しか会話らしい会話もできず、照れながら、コーヒーを注文。混み合う店内。すでにこの街に欠かせないコーヒー店のひとつとして、この店と彼らは存在している。コーヒー店の日常の中に、私という非日常がいる。
 
さて、再会に浸る間はない。なぜならば、日本は月曜日の朝を迎え、私にとってのオフィスアワーが始まった。日本とのスカイプ。いくつかの連絡事項を済まし、運ばれてきたアメリカーノに口をつける。
 
これが本場のマヤビニックコーヒーだ!
 
と意気込むにはやや苦いだけの液体。生豆の状態と焙煎度合いをこっそり確かめなければと思いつつも、メキシコ版ノマドワーカーの仕事は終わらず。
 
現地時間の夜8時を過ぎたころ、早番であがったはずの店長のフェルミンが店に顔を出して、再会を喜び合う。
Google翻訳を出して、会話を試みるが、なんてテンポが悪いのだろう。
 
「明日からスペイン語学校に少しの期間通いながら、あなたたちと一緒に過ごす時間を作ろうと思っています。」
 
というような翻訳を見せると、
 
Si.(はい)
 
と笑顔。通じたのかしら。
一日1〜2時間のスペイン語教室で、何かが劇的に変わるとは思えない。でも、勉強の成果って後々になって急に確認できるものかもしれない、と思うような出来事がある。
 
というのも、学生時代、週4日、2年間勉強し続けた挙句、全く会話力も読解力もつかなかったフランス語が、今、スペイン語での会話に詰まると、自然と湧いてくるのだ。教科書の中でしか使ったことのないフランス語が、突然、会話文として頭をよぎることに驚く。
 
やっぱり確実に体のどこかのBOXに格納されていたのだな、と感じつつも、同じラテン語とは言え、全く意味が通じないので、それを発する機会はない。その代わり、マラウイで少しだけ覚えたチェワ語だったり、ケニアで挨拶程度に覚えたスワヒリ語とかがぽそっと頭に浮かぶと、反射的に、でも確信をもって口をつくことがある。
 
「ケショ(明日)!」
「ケショ(明日)!」
 
と連呼しても、反応がないなぁ、と思うと、いや、違う。こりゃスペイン語ではなさそうだ。そして慌てて、あ、そういえば、
 
「マニャーナ(明日)」
 
と言い換えると、相手もニッコリ。中途半端な語学の散りがごちゃごちゃと詰まった頭。ちなみにここでは英語はまるで通じないため、一事が万事、こんな会話になってしまって苦笑い。
カフェからの去り際は、自信を持ってこう投げかける。
 
「アスタマニャーナ」(また明日) 
カフェの子たちも口を揃えて同じ言葉を掛けてくれる。
 
よく「言葉がわからなくても大丈夫!気持ちは必ず通じるから」という人がいる。これも正しいと思うけれど、やっぱり私は言葉でのやり取りがとても重要だと思う。
 
挨拶に始まり、相手やその家族のことを知ること。笑顔でにっこり、だけではとてもわかり合えない世界を、言葉が埋めてくれると思うから。
 
明日、ひとまず語学学校の手配。組合での顔合わせは29日から。長めのプロローグをようやく結ぶ時がきた。