クラウドファンディング募集の日程は7月最終週~9月第1週までとなる予定です。
改めて、日程が確定しましたら、お知らせいたします。
今日はメキシコのコーヒー生産者さんのこと、そして携わるようになったきっかけなどを綴っています。
まずは、Vol.1からさかのぼってご覧いただければ嬉しいです。
>> 「豆乃木、この夏クラウドファンディングやります!Vol.1」
>> 「豆乃木、この夏クラウドファンディングやります!Vol.2」
◆ マヤビニック生産者協同組合のご紹介
意外と知られていませんが、メキシコはコーヒー豆の生産国のひとつ。メキシコでは、伝統的に先住民が小規模なコーヒー生産を行っています。
かつては、メキシコ・コーヒー公社が政府保証価格でコーヒー豆を買い上げたり、生産者に対する技術指導を行っていました。しかし、国営企業の民営化と財政健全化政策の一環として、1989年には、政府保証価格の買い上げが廃止されたため、生産者の収入が不安定となったのです。そこで、生産者が集まって独自に商品を開発し、販売する協同組合が結成されるようになりました。
チアパス州チェナロー区にあるマヤビニック生産者協同組合(以下、マヤビニック)も、こうした協同組合の一つです。
ゼミのプロジェクトでは、民間企業のコーヒー担当者や自家焙煎店を営むロースターも参加し、マヤビニックが生産するコーヒー豆の質の向上と品質管理の改善、さらにマーケティング能力の向上などを目指しました。最終的な目的は、マヤビニック組合が、自力で組合を運営し、組合員である生産者ひとりひとりが、経済的に独立することでした。
生産者にとってのカフェ
コーヒーと一言でいっても、私たちがカップでコーヒーを飲むまでの間には、長い道のりがあります。
主な工程は次のとおりです。
1. コーヒーの実の収穫 2. 一次加工(精製) *ここまでは生産者自身でおこなう 3. 二次加工(選別) *組合の加工場でおこなう 4. 焙煎 *日本にて焙煎 5. コーヒーカップへ抽出 |
この過程はバリューチェーン(価値連鎖)と呼ばれ、生産者が主に携わる一次加工の段階では、利益は少なく、生産者の手を離れたあとの、抽出される段階(焙煎やカフェでの店頭販売)で、コーヒーの付加価値は一気に高くなります。
そのため、マヤビニック生産者協同組合では、2010年より「コーヒーの加工・焙煎、コーヒーショップの開店・経営」を目指し、2011年12月、ついに、現地に「マヤビニック・カフェ」をオープンさせたのです。
学生時代は、カフェ開店に向け、間接的なサポートをさせていただきましたが、その段階では、まさか私自身が、コーヒーに関わる仕事に就くなどとは、夢にも思っていませんでした。
コーヒーを販売しよう
私はゼミでコーヒープロジェクトに関わっていたものの、スペイン語が話せるわけでもなく、メキシコの生産現場とはほど遠いところにいました。
起業への思いは、日に日に高まっていましたが、何を「メシの種」にするのかの決定打がないまま、卒業が間近にせまっていたある日、日本国内で、生産から販売までを手掛け、海外にも販路を持つある農業関係者に出会いました。
自己紹介の流れで、関わっていたコーヒープロジェクトの話をさせていただきました。私の話を聞き終えると、その方は、こう言いました。
「作る人にとって、一番嬉しいことって何かわかる?」
私が、すぐに答えられずにいると、その方はこう続けました。
「それは作ったものが、掛けた手間に見合った価格で売れることだよ。」
と。この言葉を聞いたとき、私は、マラウイで抱いた“気まずさ”を思い出したのです。「高見の見物」でもなく、援助でもない。彼ら生産者と対等の立場で、共に汗を流すパートナーになりたい。
(マヤビニックコーヒーを日本で販売しよう。)
そう自分の気持ちが固まっていくのを感じました。
そして、大学を卒業した年の2011年10月、私は株式会社豆乃木を立ち上げたのです。
▲上の写真は、創業間もないころ、都内の百貨店での催事に出店した様子
コーヒーサビ病で「豆乃木廃業の危機」
メキシコの産地にマヤビニック組合がオープンしたカフェテリアを訪ね、はじめて、チアパス州の産地を訪れたときは、言葉の問題もあり、生産者組合の皆さんと、目も合わせられぬほどでした。アフリカでは、皆が「遠くの国から来た外国人」である私を歓迎してくれたけれど、今回は、どこか様子が異なりました。
その後、年に1~2度のペースで産地を訪れるものの、その距離は埋まらぬまま。それでも、私はマヤビニックコーヒーを「生産者自らが誇りを持てるコーヒーに」というコンセプトを掲げ、オンラインショップの開設、業務用コーヒー生豆の販売、そして年間100本以上のイベント販売会やコーヒーセミナーをしながら、奔走していました。
少しずつですが販路ができてきた2014年の頃、組合のサポーターであるルイス・アルバスから一本のメールが入りました。
「今年は思った以上にサビ病が深刻で、コーヒー豆をあなたの希望する数だけ用意できるかわかりません。」
という内容でした。
サビ病とは、「コーヒーさび病菌」という名前のカビによる植物伝染病で、発症すると、葉の裏側に赤さびのような斑点がいくつも現れて次第に広がり、やがて葉は枯れ落ち、病気は葉から葉へと広がり、最終的には一本の木全体の葉が落ちる。葉を失ったコーヒーの木は、光合成を行うことができず、木そのものが枯れてしまうのです。
サビ病菌は「空気感染」し、農園全体、産地全体に広がって、すべてのコーヒーの木を壊滅させる恐ろしい病気です。
私は状況を把握するために、産地へ渡り、実際にこの目で、まったく葉っぱのついていないコーヒーの木々を目の当たりにして、絶望的な気持ちになりました。
でも、サビ病以上に深刻な問題を自覚していました。
それは、生産者の皆さんとの「コミュニケーション」の問題でした。